布袋寅泰、山下久美子の結婚につながる出会い
BLONDEとは、山下久美子さんのアルバムで、ギターで全面的に布袋さんが参加。
このアルバムでの出会いから二人の結婚につながる重要なアルバムです。
山下久美子さんは大分県別府市出身。渡辺プロダクションに所属(同じ別府市出身の歌手、大塚博堂と同様に福岡を経由してスカウトされており、渡辺プロダクションが立ち上げたNON STOPプロジェクトの一員であった。)
ーーー”アソコのほうが面白いなぁ”と思っちゃうとすぐに行かなきゃ、みたいな悪い性格があってね。〜〜中略〜〜女子高をやめて、大分でブティック勤め。アルバイトにもかかわらず一日にいくら売るというノルマがあった。そして半年で博多へ。大分に出稼ぎに来ていた博多のバンドといっしょに”今しかないんじゃない”と感じて家出同様に出発。(山下久美子 宝島/82年12月号)月間宝島編集部(編)(1989)「彼らの若き日々」, p.66 JICC
この山下久美子さんのインタビューを読むと、布袋さんとの出会いから結婚までの経緯も、偶然などもあったのでしょうが、山下久美子さんの研ぎ澄まされた嗅覚が嗅ぎ分け、運命を自分の力で掴んだもの考えられます。
山下久美子さんが初めて布袋さんを見た時に「私のロックンロール見つけた」という名言があります。
当時まだ布袋さんは一般的には知名度は低かったかもしれません、しかし3rd「BOØWY」を発売してガンガン活動していた頃ですし、布袋さんを「ロックンロール」と感じる人はすでにかなりいたと思います。
布袋さんはもう才能と実力が蓄えられており、いつでもブレイクできる状態。
できるだけ遠くに力いっぱい石を投げて、全力でその石を拾いに走る、運良くその石をつかめたら、また思いっきり遠くに投げる、そして拾いにいく、その繰り返しだ
引用:布袋寅泰「幸せの女神は勇者に味方する」2013年2月25日, p.57, 幻冬舎.
そんな布袋さんにロックの神様から与えられたチャンスがやってきます。
以下山下久美子著「ある愛の詩」より布袋さんと山下久美子さんの出会いを引用させていただきます。
これは出会いの瞬間でもあり、布袋さんがガッチリとチャンスを掴んだ瞬間でもあります。
彼は百八十七センチという長身を,折り曲げるようにして、そのときスタジオに入ってきた。髪を立て、原宿の古着屋で売っているかのような、黒とピンクのチェックのスーツを着 ていた。お洒落だなという印象だった。
「よろしくっ」 と私。
「あ、お願いします」
緊張ぎみに彼は言った。
新作のコンセプトは, ロックンロールな感覚だった。私の原点にもどってまっさらな場所から歌おうとしていた。それにはとびきりのドライヴ感のあるギターを必要とし、それ を探してきたのが、プロデューサーだった。
「すっげえいいんだよっ、ぜひ聴いてみて」
そして、硝子の向こうで彼が最初の音を出した、その瞬間、私は恋に落ちたのだと思う。
すごいっ、なんて音なのっ!
彼のギターには、瞬時に人の心を鷲づかみするかのような、とてつもない情熱があった。 どこかに怒りを含んでいるかのような、哀しみを知るような、それまでに遭ったことのない音だった。
私だけではなく、居合わせたスタッフ全員が色めきたった。やがて、椅子に腰かけ、何やら弾きづらそうにしていた彼が突然、ガッと立ち上がって弾き始めたときには、スタジオ内 が騒然となってしまった。まるでライヴの会場のように。スタジオの中で立って弾くとい う技をやってのけたのは、たぶん後にも先にも彼ぐらいなものだろう。
ついに私は見つけたと思った。欲しかった音を。人を。私のロックン·ロールを。
それからリズム録りを終える約二週間ほどの毎日を、彼とスタジオで過ごした。仮歌を入れるためにブースで隣り合わせたとき、姿は見えないけれど、私たちはすでに互いに惹かれ合っていると、感じた。
彼の音と私の歌は触発し合いながら、溶け合っていった。 なんという心地よさ! 心と声が一致しているのがわかった。久しぶりの興奮と、快感。素の私をとりもどせた。
引用:山下久美子 ある愛の詩 幻冬舎文庫 ,p.102~103, 平成15年6月15日 幻冬舎.
私フカジはミュージシャンの自伝的小説を読むのが好きで、読んでいて印象に残るシーンは「くすぶっていた時代からブレイクする瞬間」が描かれた箇所、読んでいて何だこうガーッと頭にでてきます。
上記で引用したスタジオでのシーンは読んでいるこちらも興奮してくる名場面、そして布袋さんのギターの音を表現している以下の部分、まさにこれが布袋さんのギターの音。
彼のギターには、瞬時に人の心を鷲づかみするかのような、とてつもない情熱があった。 どこかに怒りを含んでいるかのような、哀しみを知るような、それまでに遭ったことのない音だった。
引用:山下久美子 ある愛の詩 幻冬舎文庫 ,p.102~103, 平成15年6月15日 幻冬舎.
宝島2月号増刊(1989)「ROCK FILE VOL1」, p.8 JICC
「学園祭の女王、総立ちの久美子」と称され、ロックシーンを沸かせていた山下久美子さんが、まだ有名ではないバンドマンの布袋さんを見つけた。
(結婚の報道でスポーツ新聞は、「山下久美子結婚」その後小さく「相手は無名のギタリスト」と書かれていたらしく今では考えられない見出しです。)
二人がBOOWYの駆け上がりを共有していくことは想像するだけでも非常にドラマチックです。
BLONDEについて
- 1. 3度目のハートブレイク
- 2. Living together
- 3. スローナンバーのあとで
- 4. ナイフの香り
- 5. SWEET PAIN
- 6. サイド・カーに眠れない
- 7. 彼女の暗闇
- 8. 星になった嘘
- 9. 夜遊びの記憶
- 10. Color my life
■1985年11月22日発売
- プロデュース:川面博(WATANABE MUSIC)吉岡一政(COLUMBIA)
- サウンドプロデュース:吉田 建
- ドラムス:上原 裕、山木秀夫
- ベース:吉田 建
- ギター:布袋寅泰、柴山和彦、村松邦男
- アコースティク・ギター:吉田 建
- プログラミング:松武秀樹 ⇒BOOWY BEAT EMOTIONなど参加
- キーボード:国吉良一、丸尾めぐみ
吉田 建さんとの出会い
このアルバムへ参加の経緯は、ライターの平山雄一氏より吉田建さんを紹介され、泉谷しげるさんのバックバンドに参加、そのまま吉田建さんのプロデュースするこのBLONDEで弾いてくれないかと誘われての参加、とのことです。
〜1987年 PLAYER4月号 質問にお答えしますVo2参考〜
ボーカル主体の作品なので、ギターの音が前面に出ているというわけではないですが、ロックンロールな作品なので、ギターが重要な役割を占めています。このアルバムで聴ける布袋さんのギターにも部分的にハーモナイザーが薄くかかっているようです。
ピックアップトラック
3.スローナンバーのあとで
浮遊感あるイントロに切り裂くようなT-REXっぽいギターがささります。モヤモヤしながらも一目惚れの感情浮かび、カッティングで引き締まるロックなバラードの名曲。
4.ナイフの香り
スピード感あるリフの8ビートナンバー。サビのクリシェは「TEENAGE EMOTION」を思い出します。布袋さんがもしアレンジしたらBメロの白玉バッキングの後に布袋さんのコーラスが入りそう。
8.星になった嘘
わがままジュリエットのメロディアスで印象的なギターソロは、この曲にインスパイアされたとのこと。そう考えながら聴くと、全体のリズムアレンジなどもわがままジュリエットとかぶってくるような気がします。
ウォームな音色と粘りのあるチョーキングから、ソロは布袋さんではないギタリストかと思ったのですが、後半部分のウィーーンの上がりかたは多分布袋さんです、この頃のギターソロではクラウディハートと並ぶ珍しい泣きのギターソロが聴けます。(※まちがえてたらすみません。)
9.夜遊びの記憶
XTCのアンディ・パートリッジを思わせる引っ掻くギター・プレイがダークなポップに溶け込んでいます。また、エンディングのギター・ソロはスライドからチョーキングに移るアーミングのようなプレイでBOOWYでのライブを連想させます。
普通レコーディングでは、座って楽器を弾くのに布袋さんはいきなり立って踊りながら弾きだした、と山下久美子さんは語っていましたが、この曲ではないかと勝手に推測していますが、このアルバム全曲かもしれません。
この後、布袋さんプロデュース作品で私の中で大傑作、山下久美子布袋3部作へとつながります。
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山下久美子 布袋寅泰の出会い「BLONDE」の記事は→こちら
※布袋寅泰関連のエフェクター、参考にしてください
⇒BOOWY時代の布袋寅泰使用機材
→BOOWY時代の布袋寅泰のギタープレイに迫る!XTC編
→山下久美子 「Baby alone」布袋寅泰BOOWY時代の参加作品
→布袋寅泰のギタープレイ 空間をねじ曲げるリフについて検証…
→山下久美子 1986 (布袋寅泰BOOWY時代の参加作品 )