オーバードライブの快感
40代で酒浸りだった私を救ったのはオーバードライブの音だ。
10代の頃、悶々としてやり場のない気持ちを解消してくれたのもギターのオーバードライブの音、ギターの音にはやはり何かある。
断酒を決意するきっかけのひとつに民生さんの弾くギターがあげられる、断酒前なにげに民生さんのライブDVDをみてギターの音色の気持ちよさと腕前に衝撃を受けた。
恐れ多いのだが、ただ酒を飲んでやり過ごしていている自分と比べ、人生半ばを過ぎこのままを酒を飲むだけで死んでいいのかと思った。
そんな素晴らしい音を奏でる民生さんの足元にはBOSSのオーバードライブ SD-1が長年セットされていた。
あの素晴らしい音色を構成しているオーバードライブ。
※現在は奥田民生シグネチャーオーバードライブを使用しているようです。
BOSS SD-1は発売が1981年2月で、すでに30年以上も売れ続けている怪物オーバードライブ。
蒼々たるギタリストたちに使用され世界中で多くの人々に快感を与えている。
なぜBOSS SD-1は30年以上も多くのギタリストに愛され売れ続けているのだろうか?
⇒BOSS SD-1の記事一覧 BOSS SD-1 | ガーってやればいいんだよ
BOSS オーバードライブ SD-1使用ギタリスト
国外
ジミー・ペイジ、エドワード・ヴァン・ヘイレン、ジ・エッジ、ニール・ショーン、ロビン・クロスビー、リッチー・サンボラ、エイドリアン・ヴァンデンバーグ、スティーブ・ヴァイ、ザック・ワイルド、レブ・ビーチ、ローランド・グラポウ、ジョン5、ガスG
国内
Char、松本孝弘、本田毅、奥田民生、手島いさむ、ANCHANG、CLUTCH.J.HIMAWARI、ルーク篁
参照:2006年 THE BOSS BOOK2 P126〜127 シンコーミュージックエンターテイメント
バンドやろうぜ 1990年1月号 P114 JICC出版局
ギターマガジン 1998年 5月号 P33 リットーミュージック社
ギターマガジン 2004年 9月号 P87 リットーミュージック社
手元の資料にあるだけでこれだけのギタリストの使用が確認でき、世界中にBOSS SD-1の音が流れているということになる。
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人々を魅了するオーバードライブ SD-1の音色とは
SD-1の音色などは以下のように表現される
SD-1とは
・低域がタイト
・歪みはマイルド
・チューブスクリーマーと回路が似ている
・OD-1に高音域のブーストカットのトーンコントロールがついた
トーンを絞るとキュっと引き締まった印象で、トーンをあげるとチューブスクリーマー系統の音であることがわかる。
よい音はその人がカッコイイと直感で感じた音を何度も繰り返し聴いて体に染み込ませた音、万人に受ける音はある程度限られていて、個性的な音を多くの人に浸透させるのはかなり難しく、非常に高度なセンスが必要とされる。
BOSSのディレイ、DM3の記事でも書いたが、良い楽器を優れたミュージシャンが選び出し、その楽器の力を引き出す、時に開発者が意図しなかったポテンシャルを発見してしまう。
BOSSアナログディレイDM3から布袋寅泰使用機材のドンズバを考える | ガーってやればいいんだよ Rocks in my head
優れたミュージシャンが選び出した機材とは、ポテンシャルがあった上にそのミュージシャンが音楽のマジックをかけた機材だ。
BOSS SD-1は数多くのギタリストが音楽のマジックをかけた機材で、このSD-1を使うことで人々を魅了する音を出すギタリストに近づける。
、、、と思ってしまいがちだが、エレキギターの音はギタリストの腕や耳で9割ぐらいは決まってしまう。
腕が9割といえば、元も子もないが、ここで諦めるとその後の上達も何もなくなる。素晴らしいギタリスト達は、残りの1割にも強烈な情熱を傾けることができるのだ。
昔からある普通のオーバードライブという印象のBOSS SD-1は、廃版も多数あるBOSS製品のなかで30年以上も販売され、移り変わりの激しい世界で時代を超越している。
たとえば30年以上売れ続けているミュージシャンを考えると、この世界で30年以上やっていくこと凄さがわかると思う。
もともとの製品の良さに加え、素晴らしいギタリストが多数の音を残すことで多くの人の耳によい音としてインプットされ受け継がれ、今後も使用ギタリストは増殖していくと考えられる。
BOSS SD-1比較レビュー
もともと私フカジは2台のSD-1を所有していたが、下記の記事以降、製造年が違う個体に出会い合計4台になった。
BOSSのシリアル番号から年代を確認する方法とJRC4558D艶ありのSD-1 | ガーってやればいいんだよ Rocks in my head
BOSS SD-1は製造年や製造国で音の違いがあるとネットに様々な情報が飛び交っている、はたしてどうなのか、手持ちの個体で検証してみることにした。
全てかなり年数を経ているので、新品の現行のSD−1を入れたいところだが、以下の4台を弾いて聴き比べた。
SD−1 比較個体
・1981年製造 JRC4558D 艶あり※0番台 日本製
・1983年製造 JRC4558DD 艶あり 日本製
・1985年製造 JRC4558DD 艶あり 日本製
・1995年製造 JRC4558DD 艶なし 台湾製
※聴き比べのため、ボリューム、トーン、ドライブ全てフルと12時
※使用ギターはレースセンサーゴールドのFENDER ストラト
見た目でどの年の個体かを判断するためにつまみを変更しているが内部はオリジナル
同じフレーズをアンプからの音で聴き比べ、何度もつなぐ、弾くを繰り返すうちにさっぱりわからなくなってしまった(笑)ので録音した
SD-1 比較アンプなど
・BOSS アンプMG-10 クリーンセッティング
・Roland CUBE LITE JCモデリング
・BOSS Micro BRのノンエフェクトでMP3録音
懐かしいアンプ、BOSS MG10と高い評価のRoland CUBE LITEを比較レビューしてみた! | ガーってやればいいんだよ Rocks in my head
※左が1981年製造で右が1995年製造のもの
結論は「音色に大きな差はないが確実に違う」
他に所有するTURBO-OVERDRIVE(OD-2)やBOSS-OVERDRIVE(OD-3)と聴き比べるとはっきりと音色の違いがわかるが、SD−1は部品などが微妙に変わっても同じ音。
一貫してSD−1の音がするが録音したものを注意深く聴くと以下のような差が感じられた
サマリ−
⇒1981年→1983年→1985年→1995年の順番で聴くとあまり変わらない印象
⇒1995年までいって1981年に戻ると1995年製造がこもって聴こえる
⇒Roland CUBE LITE(アンプ)では全て同じ音に聴こえる
⇒BOSS MG10(アンプ)でダイレクトに聴くと1995年のこもり具合がわかる
これはオペアンプの差か個体差だろうか、JRC4558D艶あり搭載の1981年の0400の音が一番古いのにカラッと、ブライトに聴こえる。データ量の少ないMP3録音でもわかる結果になった。
この差はでかいMarshallなどだともっと顕著に現れるのではないかと思う。
Roland CUBE LITEアンプはBOSSのCOSM技術が凄すぎて差がわからない
違いが無いと感じるというレビューもあるが比較環境の可能性ではないか。
ほんの僅かな差。
このほんの僅かな差、例えばチョーキングひとつでも心に響くかどうかは、ほんの僅かな差が積み重なった表現力の差なのだ。ギタリストはこのほんの僅かな差のために膨大な練習時間が費やされる。
SD-1の製造年や日本製や台湾製での音の差も確実にあるといえる結果となったが、音の差はほんの僅かな差。
この僅かな差をどれだけ重要視するかはギタリストそれぞれの考え方、好みの違い、そしてそれが個性になる。
オーバードライブとは使用ギタリストの音を増幅させるエフェクター
先日購入したプロフェッショナルエフェクターテクニック「BOSS 歪み系ペダル編」というムックのSD-1についてのレポートで興味深い箇所があった。
実は入力段のレベルが増えた場合、OD-1やSD-1、TS系の回路は歪の質自体が変わってしまう回路になっています。
その他多くの歪み系は前段にブースターを入れても基本的な歪の質は変わらないのに対しSD1系回路は入力信号のレベルが高いと、信号が歪きらずにダイレクト音がミックスされたような特性なのです。
中野 豊,プロフェッショナルエフェクターテクニック「BOSS 歪み系ペダル編」2015年6月, p.24,シンコーミュージックエンターテイメント.
あこがれのギタリストが使っているエフェクターを使えば同じ音がでると考えてしまいがちだが(私も最初はそう思っていたし、そういうエフェクターも確かにある)、SD-1をはじめオーバードライブの多くは使用するギタリストの音が増幅されるのだ。
なので、入力された音がいまいちだと、オーバードライブはそのいまいちな音を増幅させてしまう。
SD-1はギタリストにより音色が変化するからこそずっと愛され、柔軟に時代に対応し30年以上も売れ続けていると考えられる。
ジャンルにもよるが、もしいまSD-1の音の良さがわからないと感じても手放さずにとっておくと、いつか自分の気に入ったギターやアンプに出会ったあと、SD-1の印象が変わるかもしれない。
逆に気に入ったギターやアンプに出会ったあとに、相性の良いSD-1を探すなどの楽しみもある。
BOSS SD-1について他の記事はこちらです。
最後までお読みくださいましてありがとうございます。